本文へスキップ
裏打ち・色紙・他
  裏打ち

裏打ちとは・・作品の裏側に紙を貼り付けて作品を丈夫にする作業です。

昔のテレビ刑事ものでは「捜査の裏打ちをしろ!」などと使われていましたが、最近では
「裏を取れ」「裏付け捜査」などに変化して、アリバイを証明する意味で使われています。
この裏打ちと言う作業は、表具屋さんなら本来は誰でもできるはずの作業ですが、
現在は、静岡市でも手作業で出来る人は、ほとんどいません。
これも時代の流れで仕方の無いことかも知れませんが、需要に対する仕事の変化とより安く、大量に前述のように挟めば誰でもできる「機械裏打ち」が全国的に広まったことも理由のひとつです。
実際のところ、この手作業は簡単に見えて実に奥が深く、裏打ちができれば、仕事の8割がたは仕上がったと言われるくらい熟練の技術が必要とされるからです。

 例えば、書道の習字などにしても書道用の紙の種類、(紙の漉き方と材質)、墨の種類(墨汁なのか硯で磨った墨なのか)などあり、本紙をシワなど無いように伸ばした後は
目的に応じた裏打ち紙(洋紙や和紙)を選んで、それにあわせた糊の濃さで裏打ちをして、
何回するのかなど、それぞれ違います。
乾燥させる段階でも天候によって乾燥後の裏打ち具合も変わってきますので、
書道の裏打ちひとつをとっても面倒で大変な作業になります。

 一応、裏打ち作業を簡単に説明すると下記のとおりになります。
1、裏打ちをする本紙を伸ばします。
 その為には本紙に水分を含ませ伸ばします。
水分を含ませるのに、京都をはじめ文化財系統の人達は霧吹きの圧力スプレーを使いますが、昔から水刷毛(ミズバケ)という専門の刷毛で水分を含ませから別の刷毛で撫ぜ伸ばします。 
どちらを使うにしろ、本紙のシワが無いよう伸ばす作業が一番難しく、この良し悪しが
そのまま作品の良し悪しに関わってきます。また、裏打ちする本紙の紙質によって
難易度が上がります。紙の中には乾いている時はパリッとしていて持つにも容易ですが湿った途端に濡れたトイレットペーパーより悪い状態になり指に張り付いてきたり、、持ち上げることも困難になり、自らの紙の重さで自然に破けてしまう紙もあります。

2、裏打ちをする紙を選んで、糊を付けて刷毛で本紙に裏打ち紙を貼り付ける。
本紙や絹など種類によって紙を選び、糊の濃さを変えて、刷毛で撫で付けます。
物によっては、刷毛で叩き付けて紙の繊維同士を絡めるので、裏打ちといいます。

3、裏打ちした本紙を作品の目的に合わせて、仮張りをして、乾燥させます。 
何回も裏打ちする場合は、貼り付けずにそのまま乾燥させます。

以上の、濡らして、伸ばして、糊を付けて貼る だけですが、古いものを直す時には、
1の作業の後で古い裏打ち紙を剥がす工程が入ります。
この工程が一番難しい作業になります。
後は、1、2、3、の工程を目的に応じて繰り返します。また、裏打ちは紙だけではなく、麻や布地などにもできますが、それぞれの特性があるので難しいです。 

ところで、なぜ裏打ちをするのか?というとやっぱり綺麗な作品を楽しみたいからです。
単純に波打ってシワになっているものより、ピンとしてシワが無い方が見やすいのは
言うまでもありません。 
その原因は書道などもそうですが、墨が付いた所と付いていない所では紙の収縮率が乾燥後に変わってくるので「紙のシワ」や「波打つデコボコ」など出て来ます。
これは刺繍でも同じで糸の太さや刺繍の厚みや密度により収縮率で変わるので同様です。
 せっかくの時間とお金と労力をかけた作品をシワのない綺麗な作品にしてを飾りたいと思うのは普通の事ですが、最近では、プロや先生をやっている人でも、裏打ちをすることを
知りません。そして、紙の種類にもよりますが、2回、 3回と和紙で裏打ちをすることで自分の作品が持つ力強さに加えて、湧いて出てくるような迫力を増す力を持つ作品に仕上がる事を知りません。まぁ、本人が教えてもらってないのでしょうがないです。
 ですが、昔から一流の作家になればなるほど、生活が苦しくてお金が無くても表具屋に頼み自分の作品を大切にして材料にもこだわってきました。
例えば、現在では有名な「画壇の仙人 熊谷守一」と評価されていますが、晩年になるまで貧乏生活を送り、お金が払えないので、表具屋さんへ絵で支払っていたそうです。
その他にも、表具屋さんなどに、パトロンになってもらって、絵を納めていたそうです。

同時に、商売上のパートナーだけではなく技術的なパートナーとして
私達のような名前の残らない職人と組むことで、作品を後世に残すことまで考えた耐久性のある材質を使って作品を作ってきました。
 この積み重ねがあったからこそ、日本では数百年の歳月を越えても多くの歴史遺産の文化が現代に残ってきたのです。

この裏打ち料金は基本的に紙と回数により変わってきますが、書道など一般的ものは
洋紙で1回裏打ちして額に入れる方が多いです。
和紙と洋紙の違いですが、洋紙は厚みがあり硬く水分を吸いません、和紙は薄く柔らかいので余分な水分を吸うので本紙の作品にかかる負担が少なくてすみます。
厚さを見ると洋紙の厚さと同じにするには和紙が2〜3枚必要になります。

最近では安くできる「機械の裏打ち」を頼んでいた書道をやる人達も残すものは
やはり、手作業の裏打ちで無ければダメだという評価になってきたようです。

  
色紙・短冊
  
 色紙と言えば、サイン色紙を思う人が一般的でしょう。
そして、貰ったわりに色紙を掛ける所が無く、仕舞ったり、画鋲で止めたりしているうちに
汚れたり、折れたり、破けていたりすることがあります。、
 実はその色紙を作り直すことが出来るんです。ただし、水性ペンで書いてある色紙の場合は滲んでしまうことがあるので、よく吟味する必要がありますが、マジックなら確実に大丈夫です。
そして、作り直す時は色紙のサイズも厚みも自由にできます。ですから、集めた色紙が辞書ほどの厚みになっていても、薄く作り直せばれば半分以下の厚みくらいなります。
 また、表を剥がして、裏打ちをするので元の厚さの色紙に貼り直すこともできます。
 現在のサイズは皆さんが見たことのある色紙が標準ですが他にもサイズと種類は
いくつかあります。材質の違いもありますが、良い紙を使ってあるのは少し高いです。
 当店で刺繍裏打ちや色紙などを頼む人達は、季節ごとに額などに入れ替えて、楽しんでいるようです。そうすることで、新しい額を買わずにすむし、作品も同じサイズなので仕舞って置くにも良いようです。

色紙や短冊にも基本寸法があります。

 短冊については縦の長さは同じですが、幅が狭いものと幅広の2種類があります。
少し前までは短冊は狭い所でも掛けれるので重宝して好まれていましたが、最近では、
短冊に書くことは、ほとんどありません。

 この色紙や短冊の歴史も古く、宇多天皇の御世、寛平4年(西暦894年 1119年前)には色紙形というものがありました。もちろん今のような形式の色紙ではなかったですが、
屏風などに貼り付けて楽しんでいたようです。このことから、わかるように基本的に
色紙は薄く作られていました。また、古色紙(こ しきし)と呼ばれる規格寸法もありました。

 短冊の方も色紙と同様ですが、色紙より短冊の需要が昔は多かったようです。
なぜなら、日本には古来から和歌があり、 この和歌を書く専門の用紙が短冊だったからです。 
 この和歌の評価は私を含めほとんどの日本人が百人一首を授業で覚えたくらいしか知りませんが、
 諸外国の本物の知識人の間では、古典文学を含めとても評価が高いのです。
なぜかというと、奥が深いからです。 5・7・5・7・7 この31文字の中に季節や自分の
気持ち、意思を全て込めてリズム良く詠んであるからです。 つまり、10台の女子が使う短縮言葉を繋げて抑揚をつけて詠んでるようなものです。

 その他にも和歌が詠まれた時代背景などを考察していくと、清少納言や紫式部の源氏物語に代表されるように千年以上前から日本では女性の地位が確立され、地位の高い女性ほど政略結婚もありましたが、比較的恋愛においても女性が上位で選択する自由があったこと。上級階級社会で働く女性の地位が確立され、女性が自分の意思表示をすることができ、女性視点の文学が消されずに残っていることに対しても、世界でも類を見ない驚愕すべき事実だったからです。
なぜなら、世界は日本以上にしっかりと階級社会があり、人種や性別によってしっかりと
格差があるからです。それは、先進国や後進国であっても同様だからです。

このようなことに加えて、皆さんもTVなどでも日本が好きな外国の人達が日本語を評価するように日本語にしかない心に響く言葉の表現力の魅力があるからです。

ですが、現在の日本では知識階級が日本語は要らないと教育してきた結果もあり、
東大でも外国人が日本語を日本人に教える時代になってしましました。
当然、日本語を教えないので、日本語を書けるわけがありません。
私自身にしても、学校の時間割で書道の授業がありましたが、回数はそんなにありませんでした。
そして、一番の問題は、和歌を作るには、季語といわれる季節を表す言葉など、膨大な知識と自分の教養の深さとセンスが試されることです。
こんな状態なので、短冊が使われることは、ほとんどありません。


  色紙・短冊

 その他としては画帳や折れ本、和綴本(わとじ ぼん)などの、特殊な仕事や桐箱の注文や 額のガラスをアクリルにするなどの雑用的なものまで色々あります。
 また、自分の家にあるものを何か作品や思い出に残しておきたい物などを
どうして飾れば良いのか?などの相談もうけることもあります。
実際に、無料でアドバイスをしています。
 悩んでいる方は、一度、相談してみてください。

戻る