屏風は平安時代に代表されるように「寝殿造り」の建築様式(一部屋が大広間みたいな)
の部屋を仕切る目的で使われました。
元々は衝立のことを、天武天皇、朱鳥元年(686年)頃は屏風と言っていました。
それが、いつの頃からか独立したものとなりました。
大陸から伝わった銅版や木板などで作られた物を金具などで繋ぎ、
屏風にしたものを硬屏風と呼び、代表的なものは国宝の「鳥毛立羽毛屏風」です。
現在のように木地で枠骨組みを作り、紙、又は絹などを貼って折りたたむ
ことができるようにした屏風は軟屏風と呼び、日本で生み出されました。
明の弘治年間、日本では後土御門天皇時代(1488−1499)少なくとも514年前には 日本から大陸に逆輸入されて伝わったと言う記録があります。
ちなみに、この時はまだ、蝶番(ちょうつがい)と言われる部分は革紐などで
繋がれていました。
紙製になったのは南北朝時代であり、蝶番が紙製になったことで6枚続きの絵などが
書き始められました。(平成26年時では紙製の蝶番技術が難しいので昔のように
誰でも簡単にできる金具や革紐の蝶番が一般的です。)
この紙製の蝶番は朝鮮から伝わったと伝聞されていますが、残念ながら、記録資料は
残っておらず (かの国では伝統的に正確な記録や優れた技術を生み出しても後世に残すことができない事が伝統文化らしいです。)
ただ、朝鮮紙の繊維が強靭で丈夫であったからできたという事は確かなようです。
形式は、日本の屏風と朝鮮屏風は似ていますが様式が違います。置く場所も屋内と同じですが、畳と石畳くらい違います。
こうして、出来上がった現在の日本独自の屏風は大変珍重され、
室町幕府 三代将軍 足利義満の時から外交時の贈り物として使われ、
その後も江戸幕府までは贈り物の必需品として有効活用され、欧州へも輸出された記録が残っています。
ちなみに皆さんが記者会見などで良く目にする金屏風は足利義満の時代に初めて作られ輸出されました。
そして、 時代が下っていくと用途に合わせ変化していき、江戸時代には私達が時代劇で見るような使い方をするようになり、庶民の生活必需品の一つでした。
更に時代が下った現在の日本では建築スペースや様式も変わったので、TVや美術館などで展示されるくらい特別なものになってしまいました。
家に屏風があるという人は、自慢してもいいですよ。
それでは、実際の屏風の仕立てについてですが、基本的に全部の工程ができて始めて仕立てることができる技術なので、大変難しいです。
また、屏風も含め、額や衝立、寺社の絵襖など特注品は他業種の力を借りなければ作れません。特に木地をつくる「指物師」や縁(ふち)を塗る「塗り師」がいなければできません。
木地を作るので「指物師(さしものし)」や「木地師(きじし)」または骨格(ほね)屋など呼ばれることもありますが、 彼らの仕事は紙を貼る土台となる木枠の骨組みを作ることです。
使われる木は杉材の柾目が貼る面に来るように縦横と四方に互い違いに組込むことで
力を均等にして軽くて強度がある木地を作ります。
使う木材の種類や目の使い方や骨の太さ、組子の大きさなど組み方ひとつで木地の歪みが作品に出るので耐久年数から仕上がり具合にまで影響が出る難しい仕事です。
当然、貴重な木材を使うので、残念ながら値切ることはできません。
京都系などでは屏風などの縁打ちという作業もします。
この組子の木地に紙を貼っていきます |
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塗師は本来は本漆を塗るのが仕事です。皆さんが知っているのは、お盆やお椀など肩幅に納まる範囲のものが多いと思います。
しかし、表装関係の仕事では、下準備はもちろん肩幅に納まらない長い距離の上、
曲線のある山並みになっている棒を均一に塗らなくてはならない、とても難しい仕事です。
そして、皆さんが、一般的に漆だと思っているのは合成カシュー漆塗料もしくは
黒色の塗装であり、本物の漆ではありません。
しかも、扱いの難しい本漆で塗ることが出来る職人は日本全国でも少ないです。
いずれの仕事も表具職と同様に極わずかの絶滅危惧職業です。
当店で屏風を仕立てるときは本当に専門の指物師に頼むので材料費が高いですが、
耐久年数は何十年経っても丈夫です。
また、骨組み、仕上げの縁打ち作業は自分の家でやるので、その分の手間や往復分の運賃だけでもかなり安くなります。
仕立て金額は、これまた某鑑定番組では屏風の評価が低く安い金額ですが、
実際は技術的にも非常に価値の高い貴重なものです。
単純計算としても屏風の一面が額1枚とするまら、二枚折の屏風なら額が2枚分の材料がかかりますし、六枚折の屏風となると額6枚分になってしまうので材料費がかなり掛かってしまいます。
ですが、修理する際に、使ってある木地が良い物であれば、そのまま使うことも
あるので、安くできますが、実際のところ、木地だけにしてみないと解らないのが難点です。
ただ、一つだけ言える事は、直すのを次の機会に先延ばしすればするほど、
材料は貴重になり高くなっていきます。それを加工する技術や質も落ちていくことだけは
間違いありません。 というか、材料が無くなっていきます。
また、安くて良い仕事をしてくれる職人がいなくなり、特別な芸術品となっていくので、
l今後は、高くて昔の人に比べると下手な仕事をする人達が仕事をすることになるでしょう。
<数え方>
屏風の正式な数え方も一応ありますが、数えるほどないので、
何枚折屏風と言うくらいで大丈夫です。
参考として数え方を乗せておきます
1枚=1曲 セットで1双 単品で半双
2枚折屏風1つ=2曲1隻(せき) 単品
2枚折屏風2つ=2曲1双(そう) セット
6枚折屏風1つ=6曲1帖(じょう) 単品
6枚折屏風2つ=1具(いちぐ) セット
仕立てることができるものは紙、絹、着物や織物、刺繍など大抵できます。
<作品のサイズ>
日本では昔から江戸と京都の違いはありましたが、ほぼ全国共通規格の寸法で建物が
建てられていましたので、掛軸なども建物に合わせた基本寸法でした。
最近では、建物の寸法も各家ごとに違うので、それぞれに合わせて
見た目が良い様に自由な寸法になっています。
6枚折屏風・・作品によって寸法
貼り方が変わります。
正式な寸法があります。 |
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枕屏風・・作品は刺繍です
縁は表装裂を使いました。
寸法は自由です。
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風呂先屏風・・茶道で使います
寸法が決まっています。
写真は全部、染色作品です。 |
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